なお♪
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育児に認知行動療法を活用しよう(12)

5つめのコラムの活用

ほっほい!
こんにちは,ドクターなお♪です。
毎日の育児に家事に,それにお仕事していらっしゃる方も,お疲れさまです♪

「育児に認知行動療法を活用しよう」シリーズ,夏休みを挟んで今回が第12回目となりました。

前回(第11回)は,ナナコさんの会社の新プロジェクト始動前に,実家の両親や弟のハチロウさんにナナコさんがこどもたちのお迎えや食事などのお願いをした,というところでしたね。

さて,今回は?…

ナナコさんがカズコ先輩と同じチームで取り組んできたプロジェクトも,スタートからもう3ヶ月が過ぎようとしています。

予想どおり残業も多くなって,両親やハチロウさんに助けてもらうこともたくさん出てきました。

初めのうちは,こどもの世話に実家の親の手を借りてまで,こんなにも必死で仕事する意味があるのかと不安になったナナコさん。

でも,そんな危機を救ってくれたのは認知行動療法でした。

夫のムツオさんに教わって,さらにコラムを増やしたバージョンの認知行動療法。
これまでは「状況・考え・気分(とそこに含まれる「認知の落とし穴」)・別の考え」の4つを書いていましたが,もうひとつ「新しい気分」という欄が加わりました。別の考えをしてみることで気分が変わるかどうかを検証して,どんな気分をどのくらいの強さで感じたかを書き込むのです。

書く内容はこどもたちとの関わりや躾のことよりも,実家との関係のことが多くなりましたが,ナナコさんの迷いや不安を解消するのにずいぶん役立ちました。

ナナコさんのノートをちょっと覗いてみると,こんな感じ…。

CBT012

※ (赤い数字)はこちらの「認知の落とし穴」に対応しています。

「プロジェクトの仕事にも,お義母さんたちに頼るのも,ずいぶん慣れてきたみたいだね」

ふたりで少し遅めの夕飯を食べているとき,とムツオさんが声を掛けました。

「そう見える? まだまだ『あー申し訳ないな』とか『疲れてさせてるんじゃないかな』とか考えて落ち込みそうになることもあるんだけど,ノートに別の考えを書いてみたら自然に気分が切り替えやすくなって,すごく助かってる。おかげさまでプロジェクトのほうも順調に進んでるんだ。ありがとう」

ナナコさんは,梨の皮をむきながらムツオさんにニッコリ微笑みました。

実家との関係,その後

初めこそ,気を遣ってうまく実家に甘えられなかったナナコさんも,少しずつ堂々とこどもたちの面倒をみてもらえる心境になり,実家のおかずの残りをナナコさんとムツオさんの夕食用にもらって帰れるほどになりました。

「まさかあんたがこんなに私たちの手を煩わせるようになるなんて,今まで想像したこともなかったわ」

とお母さんに言われても,

「ホント助かってる。ありがとう♪」

とサラッと受け流せるようになりました。

お父さんはときどき身体がだるそうで気掛かりだったお父さんに「最近食欲なさそうだし,しんどいんじゃないの? 迷惑掛けてごめんね」とそっと尋ねてみたら,

「お迎えの前にときどき,しばらくサボってた鍼治療に行くようにしてから楽になってきてるよ。鍼が早く終わったら和菓子屋に寄ってわらび餅を食べるのもじつは楽しみでね。母さんにはナイショだけど」

といたずらっぽい笑顔で返され,ホッとしたナナコさんでした。

ナナコさんのなかでは,ハチロウさんへの影響も気になっていました。

こどもたちが実家に寄るようになってから,いちばんガッツリ遊んでくれているのはハチロウさん。

疲れたからからといって愚痴を言うようなタイプじゃないし,怒ってキレるタイプでもないし,ひっそりと疲労を溜め込んでいるのではないか,やりたいこともガマンしてるんじゃないか…,

ナナコさんにはそんな心配がありました。

こどもたちが実家でお父さんとお風呂に入ったある日,今こそハチロウさんと話すチャンス! と思ったナナコさんはすかさず声を掛けました。

「ハチロウがムッタたちのこといっぱい面倒みてくれて,すごくありがたいの。でも,ハチロウだって毎日子守があるんじゃやりたいことがあってもできないんじゃないかって心配なんだ。いろいろ我慢してくれてるんじゃないの? ごめんね」

すると,ハチロウは思い掛けないことを話し始めました。

「姉さん,僕のほうこそ報告しなきゃと思っててさ。ずっと定職に就かなきゃと思いながら何もできずにいたんだけど,ふたりの面倒見るっていうか一緒に遊ぶのってじつはすごく楽しくて,保育とか託児とか,こどもに関わる仕事もいいよなぁって思い始めてたんだ」

…えっ?

ナナコさんはビックリして,続きを聞こうと身を乗り出しました。

「そしたらさ,大学の写真部で同期だったヤツが今こども向け写真スタジオで働いてるらしくて,『スタッフ募集が出て,知り合いに写真撮れる人がいたら紹介してって言われたんだけど,最近写真はどうなの?』ってメールくれて。写真は正直今は撮ったりしてないんだけど,こどももいっぱい来るところみたいだし,面白そうかも…って」

…こども向け写真スタジオかぁ,なるほど。

ナナコさんは家族で七五三写真を撮りに行ったときのことを思い出しました。
慣れないおしゃれ着を着せてもらってテンションが上がりすぎたりむずがったりするこどもたちを,元気なお兄さんお姉さんが見事に笑顔にしてカメラのほうを向かせて,いい感じの写真を撮ってもらいましたっけ。

「で,明後日面接受けることになったよ。採用になったら,ムッタくんたちと遊ぶのがちょっと難しくなるかもしれないけど,基本は週末が忙しいみたいだし,大丈夫かな」

「ハチロウ,すごいね! いい話じゃない。ハチロウは私よりこどもと関わるの上手だし,写真の知識もあるんだし,絶対向いてると思う。ハチロウが家にいてくれるから頼りにしちゃってたけど,ムッタたちのこと気にしないで面接で思いっきり自己アピールしてきてね。気が早いけど,今までありがとう」

ナナコさんは,ハチロウさんの話の展開に驚きつつ,喜びを隠せませんでした。

「いや,僕のほうこそありがとう。ムッタくんたちと遊ぶ楽しさが就活に向けて元気をくれた気がするんだ。僕も楽しかったんだから…。あ,父さんと母さんにはまだ秘密にしてて。採用が決まってから報告するつもり。だって今相談しても『お前には無理』って言われるだけだし」

ナナコさんは「あ~,確かにそうかもね。了解。…明後日がんばって!」と敬礼しながら最後は小声で,こどもたちのバスタオルと着替えの準備に向かったのでした。

(完)

~ 編集後記 ~

長い夏休みを挟みましたが,ナナコさんの認知行動療法を巡る物語はついに一旦完結しました。最後まで読んでいただきありがとうございました。
まだまだ,ナナコさんの育児にまつわる悩みは続くかもしれませんが,認知行動療法を使って実家の家族との関わりを上手に変化させることができました。そして,ナナコさんが実家との関わりを思い切って変えたことが,ハチロウさんにも思い掛けない影響を与えることになりましたね。
私自身も,これからのナナコさんやハチロウさんや,それぞれの家族メンバーのその後がとても気になるところです。またいつか続きを書けたらいいなと思っています。
それでは,引き続きファミリーマネジメントジャーナルをお楽しみくださいませ♪

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児童精神科の勤務医をしています。児童思春期の心の悩み,発達障害支援,特別じゃない特別支援教育,育児支援,ワークライフバランスに興味があります。夫と小学生の息子との3人暮らしのなかで,私自身も母親としてあれこれ悩みながら日々育児に奮闘中です。子育ての負担やストレスはできるだけ軽くしたいし,せっかくならこどもの育ちを楽しみたいし,でもこどもの心はしっかりたくましく育てたい…と欲張りな願望をもっています。こちらでは,子育てが少しでも楽になるような考えかたやコミュニケーションのとりかたについて,迷ったり気付いたりしたことを中心にあれこれ書いていきたいと思います。

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